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再生速度を遅くすると耳コピーが楽になるのか?

テックサイドで公開中のメロディバイダー。楽器を演奏する人たちにとっては、耳コピーを支援してくれる強力なツールになると思います。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
【メロディバイダー】クイックガイド

このページでは、私がメロディバイダーを開発するに至った経緯などを書いておきます。

速度を落とすことの功罪

耳コピーを支援するアプリケーションというと、一般的には再生速度を落として聴き取りやすくするタイプが多いように思います。

また、もともとは耳コピーでなくオーディオ編集用に作られたソフトウェアの中にも、再生速度を変える機能が付いているものをよく見かけますよね。
「そういうソフトウェアを耳コピーに利用している」
という人もいるのではないでしょうか。
実は私自身もそうでした。だから、その種のツールにはずいぶんお世話になったし、開発したプログラマーたちの優秀な頭脳には本当に頭が下がる思いです。

ただ、そういうツール類で再生速度を落として楽曲を聴き取っていると、非常にもどかしく感じることが2つあります。

  1. 大なり小なり音質が劣化する。
  2. リズムが分かりにくくなる。

この2つは、いずれも音楽のフレーズを正確に聴き取る上で、結構な問題になるんですよね。
個人的には、特に2番目のリズムの問題がかなり厄介だと思っています。

速度を落とせば、確かに音程は聴き取りやすくなります。でも、それでフレーズの耳コピーがしやすくなるかというと、意外とそうではないんですね。
音楽のフレーズとは、リズムをしっかり意識しながら音をつないだもの。だから、耳コピーをするときもリズムを正確に意識したいわけです。
ところが再生速度を半分くらいに落とすと、イン・テンポでリズムを意識するのがとても難しくなります。これは、耳コピーを経験したことがある人なら分かると思います。

音程は取れているんだけど、いわゆる「フレーズの息継ぎ」が分からず、なんか元の演奏と全然ニュアンスが違う・・・。
「耳コピーあるある」です。

リズムを把握するためには、オリジナルの速度で聴いた方が分かりやすい。
ということで私の場合は、

速度を落として音程を取る。
 ↓
元の速度でリズムを取る。

これを何度も繰り返しながら耳コピーをしていました。

で、あるとき、ふと思ったのです。
「速度を落とす機能って、本当に必要なんだろうか?」

1音ずつ音程を正確に聴き取りたければ、フレーズを1音単位で再生すればいいんじゃないか?
それに加えて、フレーズ全体をつなげて再生する機能があれば、リズムも取りやすくなる。

この2つの機能を両立させて、シンプルな操作で再生できるようにすれば・・・。
音の劣化もない。リズムの問題も解決。おお、これじゃ!

・・・というのが、メロディバイダー開発の背景です。思い切りダイジェスト版のエピソードですけど。

メロディバイターのパーシャルエリア機能を使えば、爆速・鬼速のソロフレーズでも1音ずつ分割して再生できます。
音程が分かったら、フレーズ全体を通常速度で再生してリズムを確認。
実際に自分で使ってみたら、耳コピーの作業がずいぶん楽になりました。

現実的には1音単位まで分割する必要はあまりなくて、1拍単位で3音とか4音ずつ聴き取れば十分なケースが多いです。

そうやって耳コピーを繰り返していると、どんどん聴覚が鍛えられて一度に聴き取れる音数も増えていきます。

あらためて耳コピーのすすめ

ちょっと極端な言い方かも知れませんけど、
「楽器を演奏する人は、すべからく耳コピーをするべし」
私はそう思っています

なぜかと言うと、耳コピーは「音楽の耳」を鍛えるために非常に役立つからです。
耳コピーを繰り返すことで、フレーズの細かいニュアンスを聴き取る能力がどんどん向上します。
これは演奏テクニックの上達にも直結する、きわめて有益な練習方法だと言えます。

好きなフレーズを丸コピーするという目的にとどまらず、楽器の上達という意味でも得るところが大きいのです。

まあ、クラシック音楽だけは例外ですけどね。クラシックは初めから完璧な楽譜が用意されているので、耳コピーの機会はほとんどないでしょう。

でも、それ以外のほぼすべてのジャンルにおいて、楽器のプレイヤーには耳コピーを大いに推奨したいのです。

「弾きたい曲があるんだけど楽譜が売ってない」
そんなときこそチャンスです。ぜひ自分の耳を使ってコピーに挑戦してください。最初は大変かも知れませんが、耳のためにはとてもいいトレーニングになります。
好きな曲をコピーできた上に、楽器の上達というご褒美まであるのです。頑張った分の見返りとしては十分です。

どんな上級者も、最初は模倣からスタートします。
お気に入りのフレーズを真似ているうちに、だんだんとオリジナルの要素が加わって自分だけの演奏スタイルが出来上がります。

そういう創造的なプロセスを通じて、楽器を上達する人が増えるといいと思います。
そのために自分の作ったアプリケーションが役立ってくれたら、これほど嬉しいことはありません。